富士山一周 〜黒船・岳南・身延の旅〜


今年の夏は運良く赤い18きっぷを手に入れることが出来てしまったので、またまた消費のために鉄に繰り出すことになった。
まずは、伊豆急のリゾート21の黒船電車を目指して、熱海へ向かうことに決定。伊豆急のHPに黒船電車の運行予定が載っているので事前に下調べを行なうと、8月1日は熱海7時55分発の運用に入っているようだ。しからば、それを逆算して東京発の時間を決めると、東京5時46分発に乗らなくてはならない。「ちっ!せっかくの休みの日なのに、4時半起きかよ。」って捨てゼリフ。かくして、4時半に目覚ましのセット、前の晩は飲み会だったので、かなり辛い。それでも、出かけるのは鉄魂か。(笑)。
すでに、薄明るくなっている頃に家を出る。まずは東京から東海道線で最後の活躍をする113系に乗って熱海へ向かう。朝早かったこともあり、途中から眠りにつく。起きたのは真鶴あたり。夏の強い日差しに照らされて海がきらきら光る。遠くに景勝三ッ石を見える。熱海では、すでに、リゾート21黒船電車が1番線に入線して、乗り換え客を待っていた。本来、白地に海側が赤、山側は青と大胆でいて爽やかに塗り分けられていた車両だが、今年ちょうど下田にペリーが黒船で来航、開港して150周年を迎えることになり、その一環としてリゾート21も黒船塗装にされたものだ。ちなみに、昭和36年に伊豆急が開通したときには、地元下田では伊豆急が第2の黒船と呼ばれ、今回は第3の黒船ということらしい。塗装は、全体が真っ黒で裾が赤。その上に細い白線が入ったもの。また各戸袋窓には船の窓を模した丸窓に見えるシールが添付されている。車内は下田開港に関する歴史が紹介されている。まだ朝早い時間のためかそんなに混雑していなかったので、先頭車の展望席に乗ってみた前から2番目だったが座席が階段状になっており、見通しは申し分ない。運転席はオープンタイプになって いて、クリア版のついたてで仕切られており解放感がある。そしてその上には、1986年度ブルーリボン賞のプレートが誇らしげに掲げられている。熱海を出ると、しばらくは東海道線と平行して走り、東海道線にはない来宮に到着。東海道線はここから丹那トンネルに入るが伊東線は左にカーブして伊豆半島へと進んでいく。伊東線は丹那トンネルを通らずともそれに負けず劣らずトンネルが続く。宇佐美を出て、左に海に突き出したようにそびえ立つサンハトヤを眺めるとまもなく伊東に到着。

まずはこれで出発です。東海道線113系 
田町から出てきたのかまだ幕が回送になっています。
伊豆急2100系リゾート21 黒船電車 熱海駅
戸袋窓にはご覧のような船の丸窓を模したシールが貼られています。 展望席の様子 階段状になっているので、とても見やすいです。
1986年度ブルーリボン賞を受賞しています。 伊東駅に停車中の黒船電車

ここで下車。列車は乗務員を交代して、そのまま伊豆急線へと走り去って行った。折り返しは、同発で熱海行があったが、当然、そんな列車に間に合うわけもなく、30分後に熱海まで戻る。列車は元JR113系だった200系。カラーリングこそ斬新になってはいるが見てくれは113系そのままで、車内はなおのこと目新しさを感じない。少し前までは名車と言われた伊豆急オリジナルの100系が走っていただけに、ちょっと残念だ。系列親会社の東急8000系を導入するという話もあったようだが、4ドア、ロングシートの上、トイレもないということで見送られてしまったという経緯がある。確かにリゾート列車なのに、通勤線使用の車両では味気ない。しかし、4ドアのうち中央の2ドアを締め切り、ロングシートを撤去して、クロスシートに置き換えて、なんてことをやってみたら、東急時代とは違ったオリジナリティーあふれた車両が誕生したのにとちょっと思った。

伊東駅 伊豆急200系 赤塗装
伊豆急200系 青塗装 熱海駅に到着した伊豆急200系

熱海からは東海道線で今度こそ丹那トンネルを通る。車両はJR東海の4両編成の113系。なげか行き先は沼津までしかいかない。1つ手前の三島から8分後に島田行の後続列車が出るので、三島で乗り換える。三島からは113系ながら3両編成の島田行。113系で3両編成なんてあるんだ。ってちょっと驚く。しかし3両編成だとちょっと車内は混雑気味。三島で乗り換えておいてよかった。でもって次なる目的は吉原。吉原と言えば、もうお分かりかと思うが岳南鉄道である。

熱海からは113系4両編成 左写真と同じようですが、こちらは113系3両編成です。

鉄なら東海道線で吉原を通るたびに、名古屋に向かって右側にちょこんととまってる車両が気になる存在であろう。以前訪れたときは、まだ元東急5000系が健在だった頃で、京王3000系が入ってからは初めての訪問になる。ホームの西側のいかにもローカル線というような雰囲気のある乗り換え用の跨線橋を渡り岳南鉄道の乗り場へと行く。階段の下にはこれまたローカル線らしい、出札口があり、ここで切符を買う。自動券売機などないところがまたいい。ちょうど土日と祝日のみ利用できる400円の1日乗車券があったので、それを購入。1日乗車券にしてはやや小ぶりで、セピアがかったカラー印刷に岳南の最新型になる8000系の写真があしらわれている。通常は終点の岳南江尾(がくなんえのお)まで片道350円だから、単純往復するだけでも、300円もお得であり、鉄なら絶対お勧めである。さてホームに停車中の電車は元京王井の頭線3000系を良運転台に改造した1両編成の電車である。湘南型のマスクに単行、そして朱色の塗装が、なんだかとてもよく似合っている。そしてなによりも、一方が切り妻型にされてしまわずに、両方の運転台もちゃんと湘南型で作られている ところがいい。日曜日の午前中で、下り列車ということなのか、乗客は自分を含めてわずか3人。電車はとぼとぼと出発し、東海道線から右カーブで離れて日産前に到着。さらにそのままカーブを続け、ほぼ180度方向転換して岳南江尾を目指す。次の吉原本町で2人の乗客が降りてしまい車内は自分1人になってしまう。単行の列車は自分1人だけを乗せて淡々と進む。各駅のホームで少なくない乗客がいるものの皆、吉原行を待っており、こちらの電車に乗ってくる人はいない。ちょうど中間の比奈で対向列車と交換。対向列車は緑色の8000系「がくちゃん かぐや富士号」である。ふと反対側のヤードに目をやると、マニア垂涎とも思われる電気機関車ED501が留置されている。昭和3年製の凸型電気である。そのまま電車は進み岳南富士岡へ。ここには以前走っていた元東急5000系赤ガエルが留置されている。須津(すど)、神谷と通り、東海道新幹線のガードをくぐると終点岳南江尾に到着した。ここもいかにもローカル地方線の終点駅という雰囲気がにじみ出ている駅である。

JR吉原駅ホーム西側の跨線橋が岳南鉄道線のりばになる。 吉原駅 駅名標
岳南鉄道7000系 岳南江尾駅(がくなんえのお) ホーム側から見ています。
岳南江尾駅 岳南江尾駅に到着した7000系
2両の7000系が停車する岳南江尾駅 こちらは留置されている車両です。

3分の折り返しで、とりあえず、戻って、行きに気になった岳南富士岡駅で降りてみる。久しぶりに東急5000系との対面を果たすが、屋根もないところでの野ざらし留置のため、かなり塗装が痛んでおり、残念だ。5000系は2編成留置されており、もう一方には前方に機関車がついている。また反対側には複線機関庫もありここに7000系ともう1両電気機関車が入っている。

岳南富士岡駅 かぐや姫は描かれています。 岳南富士岡駅 駅名標
5000系 元東急5000系ですでに運用はありません。 ED29も留置されています。
5000系とED29のツーショット 5000系は2本留置されています。
野ざらしのため、下地の東急時代のグリーンが出てきてしまって
ちょっと痛々しいです。
留置線全景 複線機関庫には7000系とED402

さて予定通り、次の岳南江尾行は行きにすれ違った8000系がくちゃんかぐや号で、再び、岳南江尾へ行く。今度はなぜか折り返しまで20分程時間がありゆっくりと岳南江尾駅を観察する。ホームには花壇があり、照り付ける太陽にサルビアなどの夏の花が咲き誇っており、異常なまでに鮮やかに目に映る。今度こそ折り返し列車で吉原に戻ってくる。本当は比奈に留置されているED501と貨物列車も見てきたかったのだが、このあとの予定もあり、今回は諦めることにした。しかし、東京からも比較的近くで、ローカル雰囲気満載、怪しげな電気機関車もある岳南鉄道の探訪はとってもお勧めである。18きっぷの季節には是非とも訪れたいポイントである。先ほどもちょっと書いたが、400円の1日乗車券は土日限定なので、土日の訪問をお勧めする。

8000系 がくちゃんかぐや富士号 7000系と8000系のツーショット
夏の花壇と7000系 8000系は2両編成です。
岳南江尾駅時刻表
概ね1時間に2本運転されておりローカル線にしては便利です。
岳南鉄道沿線MAP
ご覧のように、吉原を出ると大きくカーブして正反対に電車は進みます。
岳南江尾駅のすぐ手前で新幹線と交差しています。 ED501 比奈駅

次の行程は身延線で甲府に抜けようという魂胆だ。身延まで直通の電車までやや時間があるので、東田子の浦まで1区間戻る。東海道線から直通なのだから115系あたりがくるのかと思い気や2両編成の123系がやってきた。先頭側は2ドアで1列28人掛けの超スーパーロングシート。(笑)。後ろは3ドア車である。123系はご存知元荷電を改造した電車。この荷電にゆられて、富士から右側に分け入り身延線へと入っていく。林間学校へ行くのか中学生くらいの団体が乗り込んできて車内がちょっと賑やかになる。西富士宮までは車窓の右側に夏富士の秀麗な姿を拝むことができたが、ちょっと上に雲がかかっていて残念。西富士宮をでると左の大きくカーブして富士山が左側に見えるようになったかと思うと少しづつ高度をあげてゆき、そのまま山間部へ入っていく。ここでまた、うつらうつらしだして、ところどころ記憶が飛ぶ。いつのまにか林間学校へ行く生徒達も車内からいなくなっており、そして、いつのまにか静岡県から山梨県へと入っていた。電車は約1時間半の行程を経て身延に到着。ここでは接続が少々悪く40分程の時間があく。

東田子の浦駅 123系到着 東海道本線にはちょっと不釣合いです。
富士宮付近の車窓からみた富士山 身延に到着した123系

とりあえず、駅前をぶらぶら。ちょっとお腹もすいてきたが、食堂に入るほどの時間もないようで、とりあえず、駅前のまんじゅう屋で名物の身延まんじゅうを2つ買い求め、富士川を眺めながら、腹に納めた。日蓮宗の総本山という身延山という観光地を控え、駅前通りはちょっとレトロっぽく整備されている。40分後の列車は最新の2両編成の313系。ボタン式の半自動ドアに、快適なボックスシートと、先ほどの123系とは天と地ほどの違いだ。身延からはJRにしてはこまめに駅があるなと思っていたら、この身延線の前進は富士馬車鉄道・富士身延鉄道という私鉄で昭和16年に国鉄に買収された路線だそうだ。その短い駅間のおかげで、地元利用客も頻繁に乗ったり降りたりと生活路線として使われている様子が伺える。それでも善光寺までは1ボックスを1人で占領してきたが、高校生っぽい男の子達が乗ってきて、同じボックスに相席になる。この高校生、調子がいいのか、俺がからかわれているのかいろいろ話し掛けてきたり、悪い子達ではなさそうだが、おやじ狩りかと思ってちょっと怖かった。(笑)。善光寺を出るとすぐに中央本線が左側から寄り添い、身延線だけの駅である金 手(かねんて)を出ると、まもなく甲府に到着する。

123系 手前は3ドア。奥は2ドアです。 身延駅
富士川の眺め みのぶまんじゅう
身延駅 駅名標 身延−甲府間は313系です。

甲府にはほぼ同着で隣のホームに12両編成のスーパーあずさが入線。今までのローカルな雰囲気が一辺する。甲府では、駅弁の煮貝めしを買って、韮崎まで行く。小淵沢からの快速ビューやまなし号を迎えに行くためである。

甲府駅に到着した313系 EF64 茶色もとまっていました。
しばらくすると373系ふじかわが入線してきました。 ふじかわ ヘッドマーク
甲府駅 115系 長野色 韮崎駅

韮崎では50分程時間が空くので、ちょっと市内観光に出かけると言っても韮崎観音へ行くくらいだが。この韮崎の観音様はいつもあずさの車内から気になっていたもので、兼ね兼ね1度、行ってみたいと思っていたのだ。韮崎の駅は急坂の途中にあり、元はスイッチバックの駅だが、スイッチバックで利用していた本来のホームは撤去され、なくなってしまい、現在のホームは本線上に強引に据付られている。そして市街地も駅舎とは反対側にあり、中央線のガードをくぐり駅の裏側へと出ると、商店街が続くといったちょっと面白い構造だ。さて、お目当ての観音様は丘の上にそびえたっていて、場所の見当はつくのだが、実際にその場所にたどり着くのはちょっと難しい。なんとか裏山の方にたどり着き、観音って文字があったので、そこに行くと、穴観音と言って別のもの。しかし、ここも韮崎の観光名所の1つで、洞窟をくり貫き舞台づくりに張り出した観音堂があり、なかなか見事。だが、本来の目当ての韮崎観音にはなかなかたどり着かない。ようやく、市役所を回るようにして伸びている坂に到着。どうやら、この坂の上にありそうだということで、夕方になったとはいえ、まだ太陽が照りつけ 、蝉時雨の大合唱の中をテクテクと上っていく。ようやく白衣の観音様の足元に到着した。この観音様、正式名は平和観音と言って、昭和36年に韮崎市民の平和ここを訪れる登山者の安全を祈願して建立されてもので、高さ18.3mある。観音様の正面にはちょうど富士山が眺められ、目線を左に移すと、壮大な八ヶ岳が横たわっていて、この上ない風光明媚な景色が広がっている。

韮崎駅 韮崎 平和観音
平和観音の下からみた富士山 こちらは八ヶ岳

さて目的も果たし、韮崎駅に戻る。日曜日ということで登山客やハイキングの客で駅は結構、混雑している。少し駅に早めに戻ってきたのだが、ビューやまなし号の前に、あずさ26号と「はまかいじ」が出る。ほとんどの客がこれらの特急に乗るのかと思っていたら、さにあらず、みんな、自分と一緒のビューやまなしを待っているようだ。考えていることは皆同じだ。さて、あずさもはまかいじも定刻より5分ほど遅れて到着。そのあおりをくって、ビュー山梨も5分遅れで到着。韮崎の前は、始発の小淵沢だけなのだが、車内は結構、乗客でいっぱい。車両は私の一番お気に入りでオール2階建ての215系。2階席は空いてなさそうだから、最初から1階席へと行き、ボックス席を確保。とりあえず、次の甲府からはもっと混んでくるだろうから、甲府までの10分の間で、先ほど買っておいた煮貝めしを食べなくては。煮貝はあわびの醤油付けで、なぜ海のない山梨にあわびなのって思うかもしれないが、駿河湾で取れたあわびを甲府に運ぶのに、そのままだと腐ってしまうので、醤油付けにして運んだというが由来である。あわびだけのことはあって、煮貝の値段は目ん玉が飛び出るほどの値札がぶ ら下がっており、1つ5000円からといったところだ。これだけ高価なものなので、この煮貝めしにはいっているあわびはこれまた、よくぞここまで薄く切れると感心するようなものが3、4枚入っていた。(笑)。他はあわびの煮汁で炊き込んだ御飯の上に山竹の子や山菜がのっていてなかなかおいしかった。
さて、予想通り、甲府からはかなり乗客が乗り込んできて、自分のボックスにも出張帰りと思われるスーツ姿の中年サラリーマンが座った。って、おいおい、出張なら「あずさ」や「かいじ」使えよな。特急料金浮かせようってことなのかな。(笑)。この列車、快速ということで、特急が止まる駅にはすべて停車していくが、それでも、新宿まで1本でいけるのはなんともありがたい。215系は好きな車両と言ってもそれはエクステリアのことで、車内のボックスシートははっきり言ってあまり快適とは言えない。普通のボックスシートは背もたれが板状になっているが、215系の場合は、小ぶりなヘッドレストになっていて、まっすぐ座っていなければ、そこから頭が外れてしまう。ということで眠ってしまうと寝心地がよくないのだ。それでも、少しうとうと。ちゃんと起きたのは高尾から。夕暮れもだいぶせまってきており、多摩川も夕日に照らされて美しい。いろいろあった、高架工事の真っ最中の武蔵小金井付近を通過。夜の帳がまもなく下りるという頃に、光り輝くネオンの渦の中の新宿に無事到着とあいなった。18きっぷ1枚目の消化はこうして終了。

185系 はまかいじ
ビューやまなし号を待っている間にやってきました。
はまかいじ ヘッドマーク
煮貝めし 中には薄くスライスしたあわびの煮貝(右下)が杯っています。
215系 快速ビューやまなし号 新宿駅に到着です。

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